第11号(2005年4月)
平成17年度の税制改正が公表されました。社会の少子高齢化、終身雇用制度の揺らぎや働く側の価値観の多様化、国家財政の深刻化など激変する社会を反映した税制改正となりました。
今までは、定率減税、老年者控除など一定の要件にはまれば誰もが平等に減税を受けられる時代でした。
しかし、今年の改正は、一層の企業努力をすれば減税を受けられる時代に変化すると実感する内容です。
人材投資(教育訓練)促進税制の創設 |
その年の教育訓練費が直前2年間の教育訓練費の平均額より増加した場合、法人税と法人住民税の税額控除が受けられます。 |
具体例 (詳しい計算方法は裏面をご覧ください)
教育訓練費とは・・・?
従業員(役員は対象外)の「知識、技能・技術の取得」または「免許や資格の取得」を目的とするもの
1 |
講師・指導員等経費 |
社外講師、指導員に支払う講師料、指導員料 |
2 |
教材費 |
研修用の教材、プログラムの購入料など |
3 |
外部施設使用料 |
研修を行なうために使用する外部施設の利用料など |
4 |
研修参加費 |
企業経営の観点から企業が従業員の教育訓練上必要なものとして指定した講座等の受講費用、参加費用 |
5 |
研修委託費 |
講師、教材等を含め研修全体を外部教育機関へ委託する場合の費用 |
適用期間 平成17年4月1日以後開始事業年度〜3年間
適用のコツ
販売費・一般管理費に「教育訓練費」勘定を設けましょう。
また、過去2年間に行なった教育訓練費のうち税額控除の対象となるものを拾い出す必要があります。
今後の税務調査に備える意味でも、拾い出した教育訓練費の請求書等のコピーをとり一括してファイルするなど工夫が必要です。
今後対象となる訓練費、対象とならない訓練費の具体例が明らかになると思われます。
詳細が判明した後、弊社にてセミナーを開催する予定です。
中小企業新事業活動促進法による税制支援策 |
中小企業新事業活動促進法の承認を受けた場合には、@ 設備投資に対する特別償却や税額控除 A 承認期間中は留保金課税を適用しないなど税務上のメリットがあります。 |
中小企業新事業活動促進法とは、「経営革新」「創業」「新連携」に取り組む中小企業の経営革新をほぼ全業種にわたり、幅広く支援する目的として制定されたもので、旧「中小企業経営革新支援法」を受け継ぐものです。
具体例 ( 内容や金融情勢等により変動します 平成17年4月時点 )
制度名 |
金融機関 |
貸付限度額 |
貸付利率 |
貸付期間 |
中小企業経営革新等支援貸付 |
中小企業金融公庫 商工組合中央金庫 |
設備資金 7.2億円 内長期運転資金 2.5億円 |
0.7% 〜1.75% 等 |
設備資金
15年〜20年 (据置2年) 運転資金
5年〜7年 (据置1〜3年) |
国民生活金融公庫 |
設備資金 7200万円 内 運転資金 4800万円 |
1.55% 等 |
||
新事業促進支援 資金融資 |
地方銀行 信用金庫,信用組合 商工組合中央金庫 |
設備資金 1億円 運転資金 3500万円 |
1.7% 保証料 0.7% |
設備資金 10年 (据置3年) 運転資金 5年 (据置1年) |
【小規模企業者等設備導入資金の特例】
その他無利子で一定額まで借入できる制度もあります。(制度上様々な制約がありますが…)
※貸付を受ける際には経営革新計画の承認を受ける他に金融機関の金融審査を受けることが必要です。
経営革新計画の承認を受けるには・・・?
承認の条件 次のいずれかを満たす計画を立てる必要があります。
又は
弊社にて承認申請の支援業務もおこなっております。ぜひ、ご相談ください。
(裏面につづく)
その他の主な改正 |
タンス株の特定口座への受入れ再開
いわゆるタンス株を特定口座に受入れることのできる期間が平成17年4月1日〜平成21年5月31日までに再開されました。
ただし、再開後に特定口座に受入れる株についてはみなし取得価額(平成13年10月1日の株価の80%)は廃止されました。
印紙税軽減措置の延長
「不動産売買契約書」や「建設工事請負契約書」の軽減税率の適用が、平成19年3月31日まで延長されました。
定率減税の縮減
平成18年分以降の所得税について定率減税が半減されます。
所得税額の10%相当額(改正前20%)、上限125,000円(改正前250,000円)
フリーターに対する課税の強化
平成18年1月1日以後の退職者についても、給与の支払額が30万円を超える人については「給与支払報告書」の提出が義務付けられました。
参考 : 人材投資(教育訓練)促進税制の計算方法
【 法人税 】
@ 当期の教育訓練費増加割合(※)≧40%
税額控除額=当期教育訓練費の額×20%
A 当期の教育訓練費増加割合<40%
税額控除額=当期教育訓練費の額×教育訓練増加割合×0.5
当期教育訓練費の額 ― 直前2期の教育訓練費の平均額
※ 教育訓練費増加割合 =
直前2期の教育訓練費の平均額
ただし、税額控除額は当期の法人税額の10%を限度とする。
【 法人住民税 】
税額控除額=税額控除額×17.3%(県市民税 標準税率)
(文責 税理士 森下裕子)