第12号(2005年5月)
いま、そこにあるM&A ニュースで学ぶ経営改善 Vol.3
§年末調整について§
いつもお世話になっております。だんだんと暑くなってきましたね。
さて、つい最近まで世間を騒がせていた「ホリエモン」のニッポン放送買収劇は、フジテレビがライブドアの保有するニッポン放送株を買い取るという形で決着しました。しかし、まるでお祭りのような騒ぎの中、何がなんだかわからないうちに終わってしまったと感じた方も多いのではないでしょうか。
今回は、この騒ぎの間に新聞の中で飛び交った専門用語の一つ「M&A」について解説したいと思います。御自分には関係ないと思われる方もいらっしゃるかと思いますが、ひょっとすると明日には御自分がM&Aの当事者となっているかもしれません。石橋をたたいて渡る心地でご一読ください。
○ 定義
企業の合併(Merger)と買収(Acquisition)のことをいいます。つまりM&Aとは、会社同士がくっついたり、他の会社を買い取ったりすることです。
○ 従来のM&A
以前から存在したM&Aは、主に次の2つです。
1.投機的M&A 会社の株の買収を進めることでその会社の支配権を握る方法です。企業戦略の一環というよりもマネーゲームという印象が強いM&Aです。例のニッポン放送の買収もこのケースに該当します。上場会社はもちろん、非上場会社でも、経営者・株主に近づいて株の譲渡を持ちかけ、経営権を握ろうとする者が現れるかもしれません。 |
2.救済的M&A 系列内の下請けや取引先へ資金や人材をつぎ込み、影響力を強める方法です。意外に思われるかもしれませんが、取引関係を強めることで他の会社への発言力を強めることも、広い意味でM&Aに含めることができます。 最近のケースでは、業績の芳しくないもみじ銀行を、山口銀行は多額の資金と人材を投入することでもみじ銀行を実質的には自らの傘下に収め、瀬戸内海沿岸の広い営業範囲を手に入れました。 |
○ M&Aの対象として狙われやすい(狙いやすい)企業
(1)M&Aの目的
現在のM&Aは、吸収する側もされる側も、企業価値を上げることが第一の目的となっています。
・
採算の取れない事業を整理して高採算事業に集中する ・
他社から既存の事業と同種の事業を買収して会社の競争力を強化する ・
他社から既存の事業と別種の事業を買収して会社の多角的経営を行う |
することで企業価値を上げるわけです。
(2)最近の事例
最近では、ダイエーが球団の売却や、不採算店舗を閉鎖するなどして、高採算事業に集中する環境を整えました。
また、牛丼チェーン店のすき家がなか卯を買収しました。その一方で、同じ牛丼チェーン店でも最大手の吉野家はうどんチェーン店のはなまると資本・業務提携をしました。
すき家は牛丼チェーン店としての競争力を高めようとしたのに対し、吉野家は牛丼以外の外食事業の多角化を目指したのです。
(3)具体的要件
こういった例はいずれも大企業同士のものですが、中小企業でも決してM&Aの例外とはなりません。企業にとって、買収することで企業価値が上がると判断されれば、明日にでも買収の話が持ちかけられるかもしれません。
どういった企業が狙われやすいのかを紹介します。
@
企業価値の条件 |
A
経済的条件 |
・
優秀な人材を多く抱えている ・
他社には真似できない高い技術力をもつ ・
立地条件のよい土地や他に買収を仕掛けたい企業の株を多数保有している |
・
多額の債務を抱えている ・
株式の時価が安い |
○ M&A対策
もし、会社(または事業)の買収をもちかけられたら‥‥‥先方と協議してよりよい条件で会社を売却し、そのお金で別の新しい事業をするという選択肢もあります。
しかし、会社の買収に応じない方は、敵対的買収から会社を守るためにはどうすればいいのでしょうか。対策を紹介します。
(1)定款の規定による株式の譲渡制限 商法には株式の譲渡を制限できる規定があります。定款に株式の譲渡をする場合には取締役会の承認が必要である旨を記載しておけば、株主は持ち株を勝手に処分できなくなるのです。定款に譲渡制限の事項が記載されているかどうかを確認してください。 |
(2)株券の寄託・不発行 商法では、株券の保有者を株主とみなす規定があります。つまり、株券が知らぬ間に既存の株主から他人の手に渡った場合(盗難、詐欺、紛失など)、会社の運営が他人に左右されたり、最悪のときは乗っ取られる可能性もあるのです。こういったケースを防ぐには、次の二つの方法が考えられます。 @
株券の寄託 株主が、株券を保有しない旨を会社に申し出て、保有する株券を会社に提出すれば、株券がなくても株主と認められます。この場合、会社はそのことを株主名簿に記載しておく必要があります。 A
株券の不発行 定款に株券を発行しない旨を定めておくことで@と同様の効果を得るほか、株券を発行する手間を省くことができます。 @とAのいずれも、株主が株券を保有しないことで、会社をM&Aから防ぐことができます。 |
○ 最後に
2006年度からは、会社法の改正で企業の買収と、それに対する防衛策の選択肢が広がります。M&Aはますます盛んに行われるでしょう。近い将来、M&Aはより身近なものになっているかもしれません。
そのとき、みなさんがいわゆる「勝ち組」として生き残る一助になればと思います。
(文責:篠原俊吾)