第13号(2005年6月)
今年もいよいよ梅雨の季節に入りました。ちょっぴり?太めボディの筆者にとっては、多湿なこの時期が一年間で一番辛い時期ですが、皆様はいかがお過ごしでしょうか。
さて、さる5月17日、現在の商法に変わる新会社法案が衆議院を通過したのはご存知でしょうか?会社を経営していくうえでのルールをこれまで定めていたのが商法でした。商法に代わって会社法が施行されればいくつかの点で既存のルールに変更が生じます。新会社法のスタートは平成18年4月1日の予定です。今回は新会社法の中から皆様にとって重要な変更点を紹介します。
Q.1円あれば株式会社が設立できると聞きましたが、本当ですか? |
A.現行商法では、一部の特例会社を除き、株式会社の最低資本金は1000万円ですが、新会社法ではこの規制が完全に撤廃されます。つまり、1円を出資すれば株式会社を設立し、「社長」にもなれるのです。 |
ただし、設立後の剰余金の分配(いわゆる配当)は純資産が300万円以上ないとできませんのでご注意下さい。
Q.「有限会社」の名称が使えなくなると聞きましたが、本当ですか? |
A.平成18年4月1日以降、新たに「有限会社」を設立することはできません。「有限会社法」は廃止となります。 |
すでに存在する有限会社は引き続き存続できます。
すでに設立されている有限会社については、名称を変更することなく引き続き存続できます。また実質的にも何ら変わることはありません。
なお、新会社法の施行後は、前述のように株式会社の最低資本金1000万円の規制が撤廃されるので、既存の有限会社が株式会社への組織変更も容易にできるようになります。
Q.株式会社でも監査役を設置しなくてもよいと聞きましたが、本当ですか? |
A.現行商法では、株式会社には監査役を置くことが義務付けられています(有限会社は任意)。平成18年4月1日以降、一定の条件(下記にて説明)を満たす株式会社では監査役の設置は任意、つまり設置しなくてもよくなります。 |
監査役を設置しなくてもよい会社とは。
@ 株式譲渡制限会社であること。
(右面へつづく)
(前回第12号でも登場した『株式譲渡制限会社』、これは株式の譲渡をする場合に取締役会の承認が必要である旨が定款に規定されている会社をいいます。この制限を使えば、経営者は自分の意に反する人物が株主に加わることを拒絶することができます。ほとんどのオーナー企業ではこの制限がついています)
A 監査役を設置しない旨を定款に記載すること
本来、監査役は取締役(経営者)のお目付け役としての役割が期待されます。しかし、家族経営の株式会社や従業員が数名しかいない小規模株式会社では、商法の規定上、やむを得ず家族や従業員を名前だけの監査役にしているケースが大多数であり、現実にはその本来の役割が果たされていない状況に鑑みて、今回、株式譲渡制限会社では監査役の設置が不要となったのです。
Q.株式会社の取締役は一人だけでよいと聞きましたが、本当ですか? |
A.現行商法では、株式会社の取締役は3人以上必要です(有限会社は1人でも可)。平成18年4月1日以降、株式譲渡制限会社では定款に取締役会を設置しないことを規定すれば取締役1人で構いません。 |
Q.株式会社の取締役と監査役の任期が10年になると聞きましたが、本当ですか? |
A.現行商法では、株式会社の取締役の任期は最長2年、監査役は4年となっています(有限会社は無期)。平成18年4月1日以降、株式譲渡制限会社では定款で取締役・監査役の任期を最長10年まで伸長できることになります。 |
これら二つの規定を適用すれば役員登記の手間や費用が削減できます。
Q.利益の処分に関する議案(通称、利益処分案)が廃止されると聞きましたが、本当ですか? |
A.平成18年4月1日以降、利益処分案は廃止されます。代わりに『株主持分変動計算書』なるものを作成することになります。 |
利益処分役員賞与の取扱いを検討中です。詳細が判明次第、ご報告いたします。
Q.日本版『LLC』とは何ですか? |
A.Limited:限定 Liability:責任 Company:会社 の略です。株式会社の株主も責任の上限はその出資額ですから責任は限定されています。株式会社が多数の出資者から多額の資金を集め、その財産を基礎に大規模な事業を行う会社を想定しているのに対し、LLCは出資者の頭脳や技能といった個人的能力を基礎に事業を行う会社を想定しています。 |
合名会社や合資会社に似ています。
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合名会社 |
合資会社 |
合同会社 |
出資者の立場 |
社員 |
社員 |
社員 |
出資者の責任 |
各社員は無限責任を負う |
無限責任と有限責任の社員が共存 |
各社員が有限責任 |
出資できる財産 |
金銭の他、労働や信用を「出資」してもよい。 |
無限責任社員は合名会社と同様、有限責任社員は金銭その他の財産のみ。 |
金銭その他の財産 |
(注)株式会社では出資者を「株主」と呼びますが、合名会社等では「社員」と呼びます。
「合同会社」は皆様の実務にほとんど影響のない話題ではありますが、新会社法の目玉の一つですので、参考に紹介いたしました。合同会社の最大のメリットは、機関設計や利益の分配が社員の協議で自由に決められることです。アメリカではコンサルティング業、投資ファンド、研究開発事業などの専門性の高い、いわゆる知的事業への活用が多いようです。日本でも新会社法の目玉の一つとして注目されています。しかし、現段階では税制面の優遇措置が打ち出されていないため、合同会社制度が活発となるか疑問です。
(裏面へ続く)
実務上の対応は? |
現在、有限会社の方は…、
基本的に、現状のままで良いでしょう。対外的な信用から株式会社への変更を希望される方は弊社または担当者にお気軽にご相談下さい。
監査役を廃止したい、取締役を一人にしたい、取締役・監査役の任期を10年にしたい場合…、
役員登記の手間や費用が削減できるのでお勧めです。まずは弊社または担当者にお気軽にご相談下さい。ただし監査役の廃止は経営者へのお目付け役がいなくなることから、債権者や銀行が難色を示すケースも予想されますのでご注意下さい。
清友会計舎の取り組み |
社内研修の実施
会計・税務に携わる者にとって会社法の知識は不可欠なものであります。私どもにおきましては社内において職員研修を行い、職員全員が一定以上の知識を有し、皆様からの質問に対し適切なアドバイスができるよう新会社法の習得にあたります。
新会社法セミナーの開催
皆様からの要望が多いようでしたら、新会社法セミナーを弊社にて実施したいと考えております。セミナーの参加希望がございましたら遠慮なく弊社または担当者にお伝えください。
(終わりに)
現在の商法は明治32年に制定されたものです。時代の流れにあわせ随時改正がなされてきました。しかし抜本的な改正は初めてのことですから、法曹界・経済界のすべての人たちが必死になって対応策を検討している最中です。私どももこれを機に、今一度会社関連の法規を勉強したいと考えています。今後も皆様に重要でお役に立てる情報があればタイムリーに発信していきたいと思います。
なお、下半期の清友会計舎通信の発行予定は下記のとおりです。できるだけタイムリーな情報をお届けしたいので、現時点では特集テーマは決めていません。少しでも皆様のお役に立てるよう頑張りますので、引き続きのご愛顧を宜しくお願いします。
月 |
特集テーマ(予定) |
担当者(予定) |
7月 |
(テーマ未定) 時事ネタを中心に、税務や会計をわかりやすく説明していきたいと検討しております。ご希望のテーマがございましたら弊社までお知らせ下さい。 |
日下 真吾 |
8月 |
篠原 俊吾 |
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9月 |
森下 裕子 |
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10月 |
藤井 義久 |
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11月 |
篠原 俊吾 |
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12月 |
藤井 義久 |
(文責 公認会計士・税理士 日下真吾)